・発端はカジミール・マレーヴィチ

かつての抽象絵画の1つの到達点である、無対象を主義とする「シュプレマティスム(絶対主義)」

この過去の絵画の構成を利用し、新たな絵画を構築することを目的としている

無対象であるがゆえに感情が排除され透明性が高いためである

 

・存在することの意義

風景や物質の中に唐突に現れている四角い抽象絵画

その違和感 異質性

抽象絵画の背景には、風景や波、草むらなどが拡がる

しかしどれもこれも架空の世界

真ん中に存在する抽象絵画のオートマティスムと唐突性は、シュールレアリスムからの影響を受けている

 

・主題の欠如

この絵画に主題は無く、物語も無い空虚な世界が広がる

ある意味、風景画ともいえるが個人的な思い入れの無い題材はなく限りなく空虚である

想像の余地などなく、ただ描かれているだけ

空虚であるがゆえに見えるものは表面に表れている事象だけである

現代、あまりに複雑化した世界でも私は無意味であることを選択する

私は絵画が絵画であるための純粋さを常に求めているからである

 

2024.5.13 武藤江美奈

正方形キャンバスに正方形を描く。

これは2021年、カジミール・マレーヴィチの「黒の正方形」をオマージュとして制作した、

正方形のキャンバスを2枚組み合わせた立体作品が元になっており、制作後ずっと私の頭の片隅に残っていた。

それは、自らが生み出した作品から発せられる、訴えというか言葉、そういったものを初めて感じたからかもしれない、と今になって考える。

 

私は近年、いわゆる抽象表現主義志向のオールオーバーな画面を描いてきたのだが、

2022年末あたりから、壁に掛けられた架空の抽象絵画をモチーフとしている。

モチーフは紙に印刷された絵なのだが、キャンバスに絵の具をのせるとそれは凹凸・絵の具の輝き・筆致を得て生き生きと生まれ変わる。

私がモチーフとする架空の絵画はAIで生成しているが、完成した絵を見ると、デジタルとアナログの違いというか、写真や印刷物には埋められない、絵画の生々しさをまざまざと感じるのである。

 

私にとってそれは、壁にかけられた抽象絵画を描いた、具象絵画でもあるのだが、果たして抽象と具象の境目はどこにあるのか。

あなたが観ているものは一体何なのか、固定観念を取り払い、観る者に多方向からの問いかけを与えたい。

 

2023.1.29 武藤江美奈